花さそふ比良の山風吹きにけり
漕ぎ行く舟の跡見ゆるまで
- 歌の意味
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花を誘い散らす比良の山風が吹いたのだった。漕いでいく舟の通った跡が見えるほどに。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 128
詞書「五十首歌たてまつりし中に湖上花を」
詞書の「湖上花」は、湖の上の花、の意である。湖に散り敷いた花びらによって、舟の航跡が目に見えるという趣向を詠む。
作者の宮内卿は後鳥羽院に仕えた女房歌人で、若くして世を去った。巻第一では第四首
第七十六首に現れた。
場面は桜の散るころ、場所は近江国の琵琶湖と、その西岸にそびえる比良山である。
直接の契機は五十首歌の詠進である。
初句「花さそふ」は、花を誘い出して散らす、の意で、風を修飾する。巻第一の第十七首の家隆歌が「鴬さそへ」と風に呼びかけたのと同じ語である。
二句「比良の山風」で場所が定まる。比良山から琵琶湖へ吹き下ろす風であり、山と湖が一句のうちに結ばれる。
三句「吹きにけり」の「けり」は詠嘆で、風が吹いたのだなという気づきを示す。第百十八首と同じ結び方であり、いずれも風そのものではなく結果から判断している。
四句
五句「漕ぎ行く舟の跡見ゆるまで」は程度を示す。水面一面に花びらが浮いているために、舟が通った後に開いた水の筋が見える、という理屈である。花びらが多いことを、舟の跡という間接的な事実によって示している。
目に見えない風を、水面の花びらを介し、さらに舟の跡を介して捉える二重の間接性があり、巻第一の第四首
第七十六首でも見えるものと見えないものを扱ったこの作者の作り方が、ここでも働いている。
さそふ:誘い出す。ここでは花を散らす
ひら:近江国の山。琵琶湖の西岸にそびえる
あと:通った後に残る筋
- 作者
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宮内卿
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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