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み吉野の高嶺の桜散りにけり
嵐も白き春の曙

歌の意味
み吉野の高い峰の桜が散ったのだった。嵐までも白く見える春の曙よ。
鑑賞
巻第二 春歌下 133

詞書「最勝四天王院の障子に吉野山かきたる所」
 嵐に散る花の四首目で、この一連を締めくくる。詞書の最勝四天王院は後鳥羽院が建立した御堂で、その障子に描かれた名所絵に添えて歌が詠まれた。この歌は吉野山を描いた部分に添えられたものである。
 作者の「太上天皇」は後鳥羽院である。本巻では第九十九首に続く二度目の登場となる。
 場面は春の明け方、場所は障子に描かれた吉野山である。
 直接の契機は障子絵に添える歌としての詠出である。名所絵に歌を配する催しには当代の歌人が動員され、後鳥羽院自身も詠んでいる。

 初句
二句「み吉野の高嶺の桜」で場所と対象を掲げる。吉野は本巻でも第百首
第百十四首
第百二十一首
第百三十二首に現れており、春の歌が繰り返し立ち返る土地である。
 三句「散りにけり」の「けり」は詠嘆で、散ったのだなという気づきを示す。
 四句「嵐も白き」がこの歌の眼目である。「も」は、嵐までも、の含みで、本来色をもたない風が白く見えると言う。第百二十九首の宮内卿歌が「嵐ぞ霞む」と詠んだのと同じ発想であり、そちらが霞むと言うのに対し、こちらは端的に白いと言い切っている。
 結句「春の曙」は体言止めである。第百十四首の俊成歌と同じ結句であり、本巻でこの結句は二度目となる。桜の白、嵐の白、曙の空の淡さが重ねられ、色を欠いた明るさが一首を覆う。

たかね:高い峰
あらし:山から吹き下ろす激しい風
さいしょうしてんのうゐん:後鳥羽院が建立した御堂
作者
後鳥羽院
出典
新古今和歌集
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