古典和歌stream

桜色の庭の春風跡もなし
訪はばぞ人の雪とだに見ん

歌の意味
桜色に染まった庭を吹く春風。人の通った跡もない。もし誰かが訪ねて来たならば、せめて雪とだけでも見るだろうか。
鑑賞
巻第二 春歌下 134

詞書「千五百番歌合に」
 ここから、散り敷いた花を雪と見る歌が三首続く。この歌はその一首目で、誰も踏まない庭の花を詠む。詞書によれば千五百番歌合に出された歌である。
 作者の藤原定家は『新古今和歌集』の撰者の一人である。巻第一では第三十八首
第四十首
第四十四首
第六十三首
第九十一首に現れた。
 場面は桜の散った後、場所は作者の庭である。
 直接の契機は歌合への出詠である。

 初句「桜色の」は庭一面が花びらに覆われて桜色になっているさまをいう。
 二句「庭の春風」で、その花を動かす風が示される。
 三句「跡もなし」は、足跡もない、の意である。散り敷いた花に足跡がつかないのは、誰も訪ねて来ないからである。第百二十五首の範兼歌が花の後に人が絶えたことを詠んだのと同じ状況が、ここでは足跡の不在という目に見える形で示されている。
 四句「訪はばぞ人の」は、もし人が訪れたならば、の意の仮定である。
 結句「雪とだに見ん」の「だに」は、せめて〜だけでも、の意である。花とは見てもらえないにしても、せめて雪とだけでも見るだろうか、という言い方になる。散った花を雪に見立てる型が、ここでは仮定の中の他人の目に託されている。次の第百三十五首も同じく雪と見よと述べており、二首が結び付けられている。

あと:足跡
だに:せめて〜だけでも
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
その他の歌