八重匂ふ軒端の桜移ろひぬ
風よりさきに訪ふ人もがな
- 歌の意味
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幾重にも咲き匂う軒端の桜が色褪せてしまった。風より先に訪ねて来る人があってほしい。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 137
詞書「家の八重桜を折らせて惟明親王のもとにつかはしける」
贈答歌の二組目である。詞書によれば、自邸の八重桜を折らせて惟明親王のもとへ贈った折の歌である。次の第百三十八首がその返しにあたる。
作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第百一首に続く二度目の登場となる。贈った相手の惟明親王は高倉天皇の第三皇子で、後鳥羽院の兄にあたる。巻第一の第三十一首の作者である。
場面は八重桜の散るころ、場所は作者の家の軒端である。
直接の契機は、八重桜の枝を折らせて贈ったことである。
初句「八重匂ふ」の「八重」は幾重にも花びらの重なることをいい、「匂ふ」は色がつややかに照り映える意である。
二句「軒端の桜」は軒先の桜である。巻第一の第五十二首で作者が「軒端の梅は我を忘るな」と詠んだのと同じ位置に立つ木であり、同じ作者が軒端の花に呼びかける形が繰り返されている。
三句「移ろひぬ」の「移ろふ」は色が褪せる意、「ぬ」は完了の助動詞である。
四句「風よりさきに」は、風が散らしてしまうより先に、の意である。
結句「訪ふ人もがな」の「もがな」は願望を表す終助詞で、訪ねて来る人があってほしい、の意になる。第百二十七首の越前歌が人に問われるのを避けたいと詠んだのに対し、この歌は人に来てほしいと願っており、同じ状況を逆に扱っている。花を贈るという行為自体が、来てほしいという求めの代わりになっている。
やへ:幾重にも重なること
うつろふ:色が褪せる
もがな:願望を表す終助詞。〜があってほしい
- 作者
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式子内親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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