つらきかな移ろふまでに八重桜
訪へども言はで過ぐる心は
- 歌の意味
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つらいことだ。八重桜が色褪せるまで、訪ねよとも言わずに過ごしていたその心は。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 138
詞書「返し」
前歌への返歌である。花が褪せるまで声をかけてくれなかった相手の心をつらいと述べ、贈られた側から軽く抗議する形をとる。
作者の惟明親王(一一七九〜一二二一)は高倉天皇の第三皇子で、後鳥羽院の兄にあたる。皇位につくことはなく、和歌に親しんだ。巻第一では第三十一首に現れた。
場面は前歌と同じく八重桜の散るころである。
直接の契機は、式子内親王から八重桜の枝と歌を贈られたことである。
初句「つらきかな」の「つらし」は、相手の仕打ちが冷たくてつらい、の意である。「かな」は詠嘆の終助詞で、まず感情を言い切ってから理由を述べる倒置になっている。
二句「移ろふまでに」は前歌の「移ろひぬ」を受けた語である。相手の用いた語をそのまま返すのは贈答歌の作法であり、第百三十六首でも同じ受け方がなされていた。
三句「八重桜」も前歌の語を受ける。
四句「訪へども言はで」は、訪ねよとも言わずに、の意である。前歌が「訪ふ人もがな」と願うにとどまったことを、なぜ直接誘ってくれなかったのかと言い換えている。
結句「過ぐる心は」は体言止めで、初句の「つらき」に係る倒置である。つらいと言いながら、その内容は誘われなかったことへの不満であり、第百三十六首の良経歌が「誘はれぬ人のためとや」と応じたのと同じ構図が、この組でも繰り返されている。
つらし:相手の仕打ちが冷たくてつらい
うつろふ:色が褪せる
- 作者
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惟明親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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