思ひ立つ鳥は古巣も頼むらん
馴れぬる花のあとの夕暮
- 歌の意味
-
旅立とうと思い立つ鳥は、帰るべき古巣を頼みにもしているのだろう。馴れ親しんだ花の散った後の夕暮よ。
- 鑑賞
-
巻第二 春歌下 154
詞書「千五百番歌合に」
花が散った後の心細さを、渡り鳥と比べて詠む。鳥には帰る古巣があるが、人にはそれがない、という含みをもつ。詞書によれば千五百番歌合に出された歌である。
作者の寂蓮法師は俗名を藤原定長といい、藤原俊成の甥で養子となった。『新古今和歌集』の撰者に任じられたが、完成を見ずに没した。巻第一では第五十八首
第八十七首に現れた。
場面は桜の散った後の夕暮、場所は特定されない。
直接の契機は歌合への出詠である。
初句「思ひ立つ」は、決意する、旅立とうと思う、の意である。北へ帰る鳥を指す。
二句「鳥は古巣も」の「古巣」は以前から使っている巣で、巻第一の第三十一首の惟明親王歌にも用いられた語である。「も」は、行く先だけでなく帰る場所も、の含みである。
三句「頼むらん」の「らん」は現在推量の助動詞で、頼みにしているのだろう、と推し量る。
四句「馴れぬる花の」の「馴る」は馴れ親しむ意で、第百二十六首の西行歌にも用いられた語である。花に馴れ親しんだ結果として、失った後がつらいという理屈が共通する。
結句「あとの夕暮」は体言止めである。鳥には帰る場所があるが、花に馴れた者にはその花がもう無い。比較の一方だけを述べ、もう一方は言わずに置くことで、対比が読み手に委ねられている。
おもひたつ:決意する。旅立とうと思い立つ
ふるす:以前から使っている古い巣
なる:馴れ親しむ
- 作者
-
寂蓮法師
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-