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散り残る花もやあるとうち群れて
深山隠れを尋ねてしかな

歌の意味
散り残った花もあるだろうかと、連れ立って、深い山の隠れたあたりを尋ねてみたいものだ。
鑑賞
巻第二 春歌下 167

詞書「春の暮つ方、実方朝臣のもとにつかはしける」
 ここから春の終わりを惜しむ歌が続く。この歌は、散り残った花を求めて深山へ入ろうと友を誘うものである。詞書によれば春の暮れ方に藤原実方のもとへ贈られた。実方は『新古今和歌集』巻第九にも歌が採られている歌人である。
 作者の「藤原道信朝臣」は藤原道信(九七二〜九九四)である。藤原為光の子で、二十三歳で世を去った。中古三十六歌仙の一人に数えられる。
 場面は春の終わり、場所は深い山を思い描いている。
 直接の契機は、実方のもとへ歌を贈ったことである。

 初句
二句「散り残る花もやあると」の「や」は疑問の係助詞で、あるだろうか、と問う形である。まだ散っていない花が残っている見込みが示される。
 三句「うち群れて」は、連れ立って、の意である。「うち」は語調を整える接頭語である。一人ではなく友と行くという設定は、巻第一の第八十二首の家隆歌の「思ふどち」に通じる。
 四句「深山隠れを」は、深い山の隠れたあたり、の意である。人目につかない場所であるから花が残っているだろう、という理屈が背後にある。
 結句「尋ねてしかな」の「てしかな」は願望を表す終助詞で、〜したいものだ、の意である。第百五十三首の良暹歌が花を尋ねて散り果てを見たのに対し、この歌はまだ尋ねる前の段階にある。散り残りを求めて山奥へ向かうという構えは、巻第一の第八十六首で西行がまだ見ぬ方の花を尋ねようと詠んだのとも通じる。

うちむる:連れ立つ。群れをなす
みやまがくれ:深い山の隠れたあたり
てしかな:願望を表す終助詞。〜したいものだ
作者
藤原道信
出典
新古今和歌集
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