石上布留の早稲田をうちかへし
恨みかねたる春の暮かな
- 歌の意味
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石上の布留の早稲田を打ち返すように、繰り返し恨もうとしてもそうしきれない、春の暮であることだ。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 171
詞書「題しらず」
春の終わりを惜しむ歌の五首目である。田を打ち返す動作を掛詞の軸として、春への恨みを言い切れない心を詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
作者の「皇太后宮大夫俊成女」は藤原俊成の孫で、その養女となった女性である。本巻では第百十二首
第百四十首に続く三度目の登場となる。
場面は春の終わり、場所は大和国の石上、布留の地である。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
初句「石上」は「ふる」に掛かる枕詞であり、二句の「布留」の地名を導く。巻第一の第八十八首
第九十六首でも同じ働き方をしている。
二句「布留の早稲田を」の「早稲田」は早稲を植えた田である。
三句「うちかへし」は田を鋤き返すことをいうと同時に、繰り返しの意を含む。巻第一の第八十九首の公忠歌が「荒小田を返す返すも」と詠んだのと同じ趣向であり、農作業の語を心情の言い回しに用いている。また田を打ち返せば土の裏が見えることから、「うら」の音によって次の「恨み」を導いてもいる。
四句「恨みかねたる」の「かぬ」は、〜しきれない、の意である。恨もうとしても恨みきれない、という中途半端な心が示される。
結句「春の暮かな」は体言止めで、「かな」の詠嘆で結ばれる。恨む相手は春であるが、その春がまさに去ろうとしており、恨みを向ける先が失われつつある。
わさだ:早稲を植えた田
うちかへす:田を鋤き返す。また、繰り返す
かぬ:〜しきれない
- 作者
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藤原俊成女
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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