待てといふに止まらぬものと知りながら
強ひてぞ惜しき春の別れは
- 歌の意味
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待てと言っても止まらないものだと知りながら、それでも無理に惜しまれる、春との別れは。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 172
詞書「寛平御時きさいの宮の歌合歌」
春の終わりを惜しむ歌の六首目である。引き止めても止まらないと知りつつ、それでも惜しむと述べる。詞書によれば宇多天皇の御代に后の宮で催された歌合の歌である。巻第一の第六十五首、本巻の第百九首も同じ歌合の詠である。
作者は「よみ人しらず」とあり、人名は伝わっていない。
場面は春の終わり、場所は特定されない。
直接の契機は歌合への出詠である。
初句「待てといふに」は、待てと言っても、の意である。季節に向かって呼びかけるという設定が置かれる。
二句「止まらぬものと」は、止まらないものだと、の意である。「と」は引用で、下の「知りながら」に係る。
三句「知りながら」の「ながら」は逆接で、知っていながら、の意になる。理として承知していることが、まず認められる。
四句「強ひてぞ惜しき」の「強ひて」は、無理に、それでも、の意である。「ぞ」は係助詞で、「惜しき」の連体形が結びとなる。理屈では割り切れない心の動きが、この一語に集約されている。
結句「春の別れは」は体言止めで、四句に係る倒置である。第百四十一首の実定歌が理屈を排して事実だけを示したのに対し、この歌は理屈を承知したうえでそれに従えないと述べており、同じ無常の主題を別の角度から扱っている。
しひて:無理に。それでもなお
ながら:逆接を表す接続助詞。〜ていながら
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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