散り果てて花の陰なき木のもとに
たつこと安き夏衣かな
- 歌の意味
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散り果てて花の陰もない木の下に、立ちやすくなった夏衣であることだ。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 177
詞書「更衣をよみ侍りける」
更衣の二首目である。花のなくなった木の下は立ち去りやすいと詠み、春に立ち去りがたかったことを裏から示す。詞書によれば更衣を題として詠まれた。
作者の「前大僧正慈円」は慈円である。関白藤原忠通の子で、天台座主を四度務め、歴史書『愚管抄』を著した。巻第一では第三十三首、巻第二では第九十五首に現れた。
場面は四月一日の更衣のころ、場所は花の散り果てた木の下である。
直接の契機は「更衣」の題による詠である。
初句「散り果てて」は、すっかり散ってしまって、の意である。巻第二の第百四十六首の後白河院歌にも用いられた語で、花の終わりを示す。
二句「花の陰なき」は、花の陰もない、の意である。花のあいだは木の下にとどまっていたことが、その否定によって示される。
三句「木のもとに」で場所が定まる。巻第二の第百六十八首の行尊歌も「木のもとの住処」と詠んでおり、花の木の下は人がとどまる場所として繰り返し詠まれてきた。
四句「たつこと安き」の「立つ」は、その場を立ち去る意である。同時に衣を「裁つ」意が掛けられており、下の夏衣の縁語として働く。掛詞と縁語が一語に収められている。
結句「夏衣かな」は前歌と同じ結句である。二首が同じ語で結ばれ、更衣の一連として並べられている。花がなくなったから立ち去りやすいというのは、裏返せば、花のあるあいだは立ち去りがたかったという春への未練であり、夏の歌でありながら春を振り返る位置にある。
ちりはつ:すっかり散ってしまう
たつ:その場を立ち去る意と、衣を裁つ意を掛ける
- 作者
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慈円
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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