- 歌の意味
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忘れることがあろうか。葵を草に引き結んで、仮寝をした野辺の、露の置く曙のことを。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 182
詞書「斎院に侍りける時、神館にて」
ここから賀茂祭に関わる歌が続く。この歌は斎院を務めていたころの記憶を詠む。詞書の「神館」は、賀茂祭に先立って斎院が籠る建物をいう。
作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、幼くして賀茂斎院に卜定され、十年余りその任にあった。巻第一では第三首
第五十二首
第八十三首、巻第二では第百一首
第百三十七首
第百四十九首に現れた。
場面は賀茂祭のころの明け方、場所は野辺である。賀茂祭は四月の中の酉の日に行われ、葵を挿頭にする習わしがあった。
直接の契機は、斎院を退いた後に当時を回想して詠んだことである。
式子内親王は退下の後も斎院時代の記憶を詠んだ歌をいくつか残しており、この歌もその一つに数えられる。
初句「忘れめや」の「め」は推量の助動詞「む」の已然形、「や」は反語の係助詞で、忘れようか、いや忘れない、の意になる。断定を先に置き、その内容を下の句で述べる倒置である。
二句「葵を草に」の「葵」は賀茂祭に用いられる草で、「逢ふ日」と同音であることから恋の歌にも詠まれる。ここでは祭の具としての用法が主であるが、その響きは残る。
三句「引き結び」は、草と草とを引き寄せて結ぶことをいう。旅先で草を結ぶのは道中の無事を祈る習わしでもあった。
四句「仮寝の野辺の」の「仮寝」は旅先などでの仮の眠りをいう。斎院として野に籠った夜のことである。
結句「露の曙」は体言止めである。露は明け方の景物であり、涙の暗示ともなる。忘れないと言い切りながら、何を忘れないのかは景としてしか示されず、その景が回想の全体を担っている。
あふひ:賀茂祭に用いる草。「逢ふ日」と同音
ひきむすぶ:草と草とを引き寄せて結ぶ
かりね:旅先などでの仮の眠り
かんだち:賀茂祭に先立って斎院が籠る建物
- 作者
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式子内親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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