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野辺はいまだあさかの沼に刈る草の
かつみるままに茂るころかな

歌の意味
野辺はまだ浅いというのに、浅香の沼で刈る草が、見るそばから茂っていく季節であることだ。
鑑賞
巻第三 夏歌 184

詞書「最勝四天王院の障子に浅香の沼書きたる所」
 ここから夏草を詠む歌が続く。詞書の最勝四天王院は後鳥羽院が建立した御堂で、その障子に描かれた名所絵に添えて歌が詠まれた。この歌は浅香の沼を描いた部分に添えられたものである。巻第二の第百三十三首も同じ障子絵の歌である。
 作者の藤原雅経は飛鳥井雅経で、『新古今和歌集』の撰者の一人である。巻第一では第七十四首
第九十三首
第九十四首、巻第二では第百四十五首に現れた。
 場面は夏の初め、場所は陸奥国の歌枕である浅香の沼(現在の福島県郡山市の一帯)である。真菰の一種である花かつみの名所として知られた。
 直接の契機は障子絵に添える歌としての詠出である。

 初句「野辺はいまだ」は、野辺の草はまだ浅いのに、の意である。「いまだ」の後を言い切らず、下の地名へ続ける形になっている。
 二句「浅香の沼に」の「浅香」には「浅し」の意が響き、初句の「いまだ」を受ける。地名と形容が一語で兼ねられている。
 三句「刈る草の」は、その沼で刈る草をいう。
 四句「かつみるままに」の「かつ」は、一方では、また、〜するそばから、の意である。同時に、浅香の沼の名物である「かつみ」の名を響かせており、地名と縁のある語が選ばれている。
 結句「茂るころかな」は「かな」の詠嘆で結ばれる。刈ったそばから茂るという、夏草の勢いが主題である。名所絵に添える歌として、その土地の名と名物とを地名の中に織り込む手際が働いている。

あさかのぬま:陸奥国の歌枕。現在の福島県郡山市の一帯
かつ:一方では。〜するそばから
かつみ:浅香の沼の名物とされた草。真菰の一種
作者
藤原雅経
出典
新古今和歌集
その他の歌