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夜を重ね待ちかね山の時鳥
雲居のよそに一声ぞ聞く

歌の意味
夜を重ねて待ちかねていた、その待兼山の時鳥を、はるかな雲居のかなたに一声だけ聞いた。
鑑賞
巻第三 夏歌 205

詞書「寛治八年、前太政大臣高陽院歌合に郭公を」
 待ち続けた末に遠く一声だけを聞いたと詠む。詞書によれば寛治八年に前太政大臣の高陽院で催された歌合の詠である。前太政大臣は藤原師実を指し、巻第二の第百二首の作者にあたる。高陽院はその邸宅の名である。
 作者の周防内侍は平安時代後期の女房歌人である。生没年は伝わらない。父が周防守であったことからこの呼び名がある。
 場面は夏の夜、場所は摂津国の歌枕である待兼山(現在の大阪府豊中市の一帯)である。
 直接の契機は歌合への出詠である。

 初句「夜を重ね」は、幾夜も重ねて、の意である。第百九十九首の「待ちし夜頃」と同じく、一夜ではない待ち方が示される。
 二句「待ちかね山の」は、待ちかねる意の「待ちかね」と、地名の「待兼山」とを重ねた掛詞である。心の状態と場所とが一語で兼ねられており、巻第二の第百五十六首の「たづね入るさの山」と同じ作り方である。
 三句「時鳥」で対象が示される。
 四句「雲居のよそに」の「雲居」は空、また遠く隔たったところをいう。「よそ」はほかの場所、の意である。近くではなく遠くで鳴いたことが示される。
 結句「一声ぞ聞く」は「ぞ」の係り結びである。幾夜も待った末に得られたのが遠い一声だけであるという、待つ心と報いの不釣り合いが主題である。第百九十五首以来の一声をめぐる歌の系列に連なる。

まちかねやま:摂津国の歌枕。「待ちかね」と掛ける
くもゐ:空。また遠く隔たったところ
よそ:ほかの場所
作者
周防内侍
出典
新古今和歌集
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