いかにせん来ぬ夜あまたの時鳥
待たじと思へば村雨の空
- 歌の意味
-
どうしたらよいのか。来ない夜が幾夜も重なった時鳥を、もう待つまいと思うと、折しも村雨の空だ。
- 鑑賞
-
巻第三 夏歌 214
詞書「題しらず」
待つのをやめようと思った時に限って、鳴きそうな空模様になるという心を詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
作者の藤原家隆は『新古今和歌集』の撰者の一人である。巻第一では第十七首
第三十七首
第四十五首
第八十二首、巻第二では第百十三首
第百三十九首
第百五十八首に現れた。
場面は夏の夜、場所は特定されない。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
時鳥は雨の降る夜によく鳴くとされ、村雨の空は鳴き声の期待される条件であった。
初句「いかにせん」は、どうしようか、の意で、途方に暮れた心が最初に置かれる。
二句「来ぬ夜あまたの」は、来ない夜が幾夜も重なった、の意である。第二百五首の「夜を重ね」、第百九十九首の「待ちし夜頃」と同じく、待ち続けた夜数が示される。
三句「時鳥」で対象が示される。
四句「待たじと思へば」の「じ」は打消意志の助動詞で、もう待つまいと思うと、の意になる。断念しようとする心の動きが示される。
結句「村雨の空」は体言止めである。「村雨」はにわかに降ってはやむ雨をいう。断念しようとしたその時に、鳴きそうな空になるという巡り合わせが、答えを示さずに景として置かれる。初句の問いはそのまま宙に残り、待つことをやめられない状態が示されている。
あまた:数多く
じ:打消意志の助動詞。〜まい
むらさめ:にわかに降ってはやむ雨
- 作者
-
藤原家隆
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-