古典和歌stream

時鳥深き峰より出でにけり
外山の裾に声の落ち来る

歌の意味
時鳥が深い峰から出て来たのだった。里近い山の裾に、その声が落ちてくる。
鑑賞
巻第三 夏歌 218

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 時鳥が山を下って来たことを、声の落ちてくる方向によって知ると詠む。原文では詞書も作者名も改めて記されておらず、前の歌と同じ作者が続くことを示している。
 作者は前歌に続いて西行法師である。
 場面は夏、場所は深い峰と、里に近い外山である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「時鳥」で対象を掲げる。
 二句
三句「深き峰より出でにけり」の「けり」は詠嘆で、出て来たのだなという気づきを示す。第百九十二首の「深山出づなる」、第百九十六首の「鳴きつつ出づる」と同じ観念であり、時鳥が山から里へ下るという当時の理解に基づく。
 四句「外山の裾に」の「外山」は里に近い山をいい、「深き峰」と対になる語である。奥から手前へ、高いところから低いところへと、鳥の移動が二つの地形の対比で示される。
 結句「声の落ち来る」は、声が落ちてくる、の意である。「落つ」を用いることで、声が上から下へ降りてくるものとして捉えられている。姿は見えず、声の来る高さと方角だけで鳥の位置を知るという作りであり、この一連に共通する方法である。
 前歌が声を得られない場合を引き受けたのに対し、この歌では声が確かに近づいており、同じ作者の二首が対をなしている。

とやま:里に近い山。「深山」に対する語
すそ:山の下のほう
おちく:落ちてくる
作者
西行法師
出典
新古今和歌集
その他の歌