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うち湿りあやめぞ香る時鳥
鳴くや五月の雨の夕暮

歌の意味
しっとりと湿って菖蒲が香っている。時鳥が鳴くという、五月の雨の夕暮よ。
鑑賞
巻第三 夏歌 220

詞書「五首歌人々によませ侍りける時、夏歌とてよみ侍りける」
 時鳥の一連から菖蒲の一連へ移る位置に置かれる。時鳥と菖蒲と五月雨という、五月の景物を一首に集めている。詞書によれば人々に五首歌を詠ませた折に、夏の歌として詠まれた。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。本巻では第二百九首に続く二度目の登場となる。
 場面は五月雨のころの夕暮、場所は特定されない。
 直接の契機は五首歌の詠出である。
 菖蒲は五月五日の節句に軒に葺き、また薬玉に用いられた。香りの強い草として、邪気を払うと考えられていた。

 初句「うち湿り」は、しっとりと湿って、の意である。「うち」は語調を整える接頭語である。雨を直接には言わず、湿り気だけを先に置いている。
 二句「あやめぞ香る」の「ぞ」は係助詞で、「香る」の連体形が結びとなる。湿ることで香りが立つという因果が、二句までに収められている。
 三句「時鳥」で鳥が示される。ここまでの一連の主役が、菖蒲の一連へ渡す位置で改めて現れる。
 四句「鳴くや五月の」の「や」は詠嘆の間投助詞である。「鳴くや」が「五月」に掛かる形で、時鳥の鳴く五月、の意になる。
 結句「雨の夕暮」は体言止めである。嗅覚、聴覚、視覚の三つが順に置かれ、最後に時刻で締めくくられる。第二百十四首
第二百十五首が村雨を詠んだのに続き、ここでは五月雨が場面の背景となっている。

うちしめる:しっとりと湿る。「うち」は語調を整える接頭語
あやめ:菖蒲。五月五日の節句に軒に葺き、薬玉に用いた
さつき:陰暦五月
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
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