早苗とる山田の懸樋漏りにけり
引く標縄に露ぞこぼるる
- 歌の意味
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早苗を取る山田の懸樋が漏っていたのだった。引き渡した標縄に、その雫がこぼれかかっている。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 225
詞書「山畦早苗といへる心を」
ここから田を主題とする歌が続く。詞書の「山畦早苗」は、山の畦の早苗、の意である。田に水を引く懸樋が漏り、その水が標縄にかかる情景を詠む。
作者の「大納言経信」は源経信である。本巻では第百九十七首
第二百二十二首に続く三度目の登場となる。
場面は田植えのころ、場所は山あいの田である。
直接の契機は「山畦早苗」の題による詠である。
標縄は神域や自分の場所を示すために張る縄で、田では他人の立ち入りを断つために引かれた。巻第一の第十一首
第十二首で若菜の野に標を立てる行為が詠まれたのと同じ観念である。
初句「早苗とる」は、苗代から苗を取る、の意である。田植えの直前の作業を示す。
二句「山田の懸樋」の「懸樋」は、水を引くために架け渡した樋をいう。
三句「漏りにけり」の「けり」は詠嘆で、漏っていたのだなという気づきを表す。
四句「引く標縄に」は、張り渡した標縄に、の意である。
結句「露ぞこぼるる」は「ぞ」の係り結びで、「こぼるる」の連体形が結びとなる。「露」はここでは懸樋から漏れた水滴を指す。人の営みの道具である懸樋と標縄が並べられ、その上に水が落ちるという、労働の場に即した景である。本巻の歌の多くが花鳥を詠むなかで、田の仕事を素材とする点は、巻第一の第六十七首の勝命歌と通じる。
さなへ:苗代から取って田に植える稲の苗
かけひ:水を引くために架け渡した樋
しめなは:神域や自分の場所を示すために張る縄
- 作者
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源経信
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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