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小山田に引く標縄のうちはへて
朽ちやしぬらん五月雨の頃

歌の意味
小山田に引き渡した標縄が、長く続いたまま朽ちてしまったのだろうか。五月雨の降り続くころに。
鑑賞
巻第三 夏歌 226

詞書「釈阿九十賀たまはせ侍りし時、屏風に五月雨」
 田の二首目である。前歌の標縄を受け、その縄が長雨に朽ちたのではないかと詠む。詞書の「釈阿」は藤原俊成の法名で、その九十賀の折の屏風歌である。巻第二の巻頭第九十九首も同じ九十賀の屏風歌である。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。本巻では第二百九首
第二百二十首に続く三度目の登場となる。
 場面は五月雨のころ、場所は山あいの小さな田である。
 直接の契機は九十賀の屏風歌としての詠出である。

 初句「小山田に」の「小」は語調を整える接頭語で、山あいの田をいう。
 二句「引く標縄の」は前歌と同じ語である。二首が同じ物を詠み、並べて置かれている。
 三句「うちはへて」は、長く引き続いて、の意である。縄が長く張り渡されている状態と、雨が長く降り続く状態との両方に働き、「標縄」の縁語ともなる。
 四句「朽ちやしぬらん」の「や」は疑問の係助詞、「らん」は現在推量の助動詞である。目の前で見たのではなく、長雨のあいだに朽ちたのではないかと推し量る形である。
 結句「五月雨の頃」は体言止めである。「五月雨」は陰暦五月に降り続く長雨をいう。人が張った縄が自然によって朽ちるという構図であり、前歌が懸樋の漏れという小さな破れを詠んだのに続き、こちらは縄そのものの朽ちるまでを詠んでいる。

をやまだ:山あいの小さな田
うちはふ:長く引き続く
さみだれ:陰暦五月に降り続く長雨
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
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