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玉鉾の道行く人の言伝ても
絶えて程経る五月雨の空

歌の意味
道を行く人に託す言伝てさえも絶えて、日数が経っていく五月雨の空よ。
鑑賞
巻第三 夏歌 232

詞書「五月雨の心を」
 五月雨によって人の往来が絶えることを詠む。詞書によれば五月雨を題として詠まれた。
 作者の藤原定家は『新古今和歌集』の撰者の一人である。巻第一では第三十八首ほか、巻第二では第百三十四首ほかに現れた。本巻ではこれが初めての登場となる。
 場面は五月雨のころ、場所は特定されない。
 直接の契機は「五月雨」の題による詠である。

 初句「玉鉾の」は「道」に掛かる枕詞である。第百八十八首の元真歌、巻第二の第百十三首の家隆歌にも用いられた。
 二句「道行く人の」は、道を通る人をいう。第百八十八首では夏草を結ぶ者として現れたが、ここではその往来自体が絶える。
 三句「言伝ても」の「言伝て」は人に託して伝える言葉である。「も」は、言伝てさえも、の含みで、直接の訪れどころか伝言すら来ないことになる。
 四句「絶えて程経る」の「程経る」は日数が経つ、の意である。「経る」には雨が「降る」の音が響き、五月雨の縁語として働く。
 結句「五月雨の空」は体言止めである。長雨によって人の営みが止まるという主題は、第二百二十六首から第二百三十一首にかけて続いてきたもので、この歌ではそれが人と人との交わりの断絶として現れる。物が朽ちることから、便りが絶えることへ、主題が人事へ移っている。

たまほこの:「道」に掛かる枕詞
ことづて:人に託して伝える言葉
ほどふ:日数が経つ。雨の「降る」の音を響かせる
作者
藤原定家
出典
新古今和歌集
その他の歌