古典和歌stream

五月雨の雲の絶え間を眺めつつ
窓より西に月を待つかな

歌の意味
五月雨の雲の絶え間を眺め続けて、窓から西のほうに月を待っていることだ。
鑑賞
巻第三 夏歌 233

詞書は前の歌に続き「五月雨の心を」
 五月雨の雲の切れ間から月を待つ心を詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の荒木田氏良は伊勢神宮の神職を務めた人物である。生没年は伝わらない。
 場面は五月雨のころの夜、場所は作者の住まいの窓辺である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句
二句「五月雨の雲の絶え間を」は、長雨の雲に生じた切れ間、の意である。第二百二十七首の伊勢大輔歌が「雲間も見えぬ」と切れ間のないことを詠んだのに対し、この歌はその切れ間を待つ。
 三句「眺めつつ」の「眺む」は物思いにふけって見ることで、「長雨」と同音でもある。巻第一の第六十四首の行慶歌、巻第二の第百四十九首の式子内親王歌でも同じ掛かり方が用いられており、五月雨を詠むこの歌では両義がとくに働く。「つつ」は継続を表す。
 四句「窓より西に」は、窓から西のほうに、の意である。方角を明示するのは和歌では珍しく、月の出る方向を待つという具体性が加わる。窓という語も和歌には多くない。
 結句「月を待つかな」は「かな」の詠嘆で結ばれる。時鳥を待つ一連が本巻の前半を占めたのに続き、ここでは月が待たれており、待つという行為が対象を替えて反復されている。

たえま:とぎれた間。切れ目
ながむ:物思いにふけって見る。「長雨」と同音
作者
荒木田氏良
出典
新古今和歌集
その他の歌