- 歌の意味
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帰って来ない昔を今のことと思いながら寝入った、その夢の枕もとに香る橘よ。
- 鑑賞
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巻第三 夏歌 240
詞書「百首歌たてまつりし時、夏歌」
花橘の三首目である。前の二首が未来を問うたのに対し、この歌は過去へ向かう。夢の中で昔が今として現れ、そこに橘が香る。詞書によれば百首歌を詠進した折の夏の歌である。
作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第百八十二首
第二百十五首に続く三度目の登場となる。
場面は花橘の咲くころの夜、場所は寝所である。
直接の契機は百首歌の詠進である。
初句「帰り来ぬ」は、帰って来ない、の意である。取り返しのつかない過去であることが、最初に断られる。
二句「昔を今と」は、昔を今のことと、の意である。時間の隔たりが、思いの中で消される。
三句「思ひ寝の」の「思ひ寝」は、思いを抱いたまま寝入ることをいう。思い続けた対象が夢に現れるという観念が前提にある。
四句「夢の枕に」は、夢を見ている枕もとに、の意である。巻第一の第三十八首の定家歌が「春の夜の夢の浮橋」と詠み、巻第二の第百十二首の俊成女歌が「春の夜の夢」を枕の香とともに詠んだのと同じく、夢と香りが結び付けられている。
結句「匂ふ橘」は体言止めである。夢の中の出来事と、実際に漂う香とが区別されないまま置かれる。眠っているあいだも香は届いているのであり、香が夢を呼んだのか、夢が香を呼んだのかが決められない構成になっている。
おもひね:思いを抱いたまま寝入ること
にほふ:香りが立つ
- 作者
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式子内親王
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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