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今年より花咲きそむる橘の
いかで昔の香に匂ふらん

歌の意味
今年から初めて花が咲きはじめた橘なのに、どうして昔と同じ香に匂うのだろう。
鑑賞
巻第三 夏歌 246

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 花橘の九首目である。今年初めて咲いた木が昔と同じ香を放つのはなぜか、と問う。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の藤原家隆は『新古今和歌集』の撰者の一人である。本巻では第二百十四首に続く二度目の登場となる。
 場面は花橘の咲くころ、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「今年より」は、今年から、の意である。木そのものが新しいことが、まず示される。
 二句「花咲きそむる」の「そむ」は〜しはじめる意で、巻第一の第七首
第六十八首でも用いられた語である。
 三句「橘の」で対象が定まる。
 四句「いかで昔の」の「いかで」は、どうして、の意の副詞で、疑問を表す。
 結句「香に匂ふらん」の「らん」は現在推量の助動詞である。昔を知らないはずの若木が昔の香を放つという矛盾を突く形であり、橘の香が記憶を呼ぶという通念に理屈を差し向けている。第二百三十八首以来の一連が情の側から香を扱ってきたのに対し、この歌は知の側から問いを立てており、一連の中で調子を変えている。

そむ:〜しはじめる
いかで:どうして。なぜ
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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