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重ねても涼しかりけり夏衣
薄き袂に宿る月影

歌の意味
重ねて着てもやはり涼しいのだった。夏衣の薄い袂に宿っている月の光よ。
鑑賞
巻第三 夏歌 260

詞書「家百首歌合に」
 涼しさを主題とする歌が続く。この歌は薄い夏衣に映る月光を涼しさの源として詠む。詞書によれば良経の家で催された百首歌合の詠で、巻第一の第二十三首
第三十七首、本巻の第二百五十一首も同じ催しの歌である。
 作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。本巻では第二百九首ほかに続く五度目の登場となる。
 場面は夏の夜、場所は特定されない。
 直接の契機は百首歌合への出詠である。

 初句「重ねても」は、衣を重ねて着ても、の意である。ふつう重ねれば暑くなるはずのところを、それでも涼しいと言う。
 二句「涼しかりけり」の「けり」は詠嘆で、思いがけないことへの気づきを表す。
 三句「夏衣」で対象が定まる。第百七十六首から第百七十九首までの更衣の一連でも用いられた語である。
 四句「薄き袂に」は、薄い夏衣の袖に、の意である。重ねてもなお薄いという含みがある。
 結句「宿る月影」は体言止めで、「影」は光をいう。涼しさの理由が、衣の薄さではなく、そこに宿る月の光であることが最後に明かされる。光を触覚として受け取る点は、第二百四十二首の慈円歌が橘の香を「袖に涼しき」と述べたのと同じ手法である。感覚の置き換えによって涼しさが表されている。

かさぬ:衣を重ねて着る
たもと:袖
つきかげ:月の光
作者
藤原良経
出典
新古今和歌集
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