道の辺に清水流るる柳陰
しばしとてこそ立ち止まりつれ
- 歌の意味
-
道のほとりに清水の流れる柳の陰。しばらくのつもりで立ち止まったのだった。
- 鑑賞
-
巻第三 夏歌 262
詞書「題しらず」
涼しさの三首目である。旅の途中で柳の木陰に足を止める場面を詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
作者の西行法師は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが二十三歳で出家した。本巻では第二百十七首
第二百十八首に続く三度目の登場となる。
場面は夏、場所は道ばたの柳の木陰である。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
この歌は西行の代表作の一つとして広く知られる。
初句「道の辺に」は、道のほとりに、の意である。旅の途中であることが最初に示される。
二句「清水流るる」で、涼しさの源が示される。
三句「柳陰」は体言止めの形で置かれ、いったん景が言い切られる。清水と柳と陰という三つが揃い、留まるだけの条件が整う。
四句「しばしとてこそ」の「しばし」はしばらくのあいだ、「とて」は引用で、そのつもりで、の意になる。「こそ」は係助詞である。巻第二の第百五十九首の俊成歌が「駒とめてなほ水かはん」と旅の途中で足を止めたのと同じ場面であり、そちらは馬に水を飲ませるためであった。
結句「立ち止まりつれ」は「こそ」の結びで已然形となる。「つれ」は完了の助動詞の已然形である。しばらくのつもりだったと言うことで、実際にはそれより長くとどまったことが言外に示される。時間の経過を直接には述べず、初めの心づもりだけを述べて残りを読み手に委ねている。
しみづ:清らかに湧き出る水
しばし:しばらくのあいだ
たちとまる:足を止める
- 作者
-
西行法師
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-