おのづから涼しくもあるか夏衣
ひも夕暮の雨の名残に
- 歌の意味
-
自然と涼しくもあることだ。夏衣の紐を解くころ、日も暮れる夕暮の、雨の名残に。
- 鑑賞
-
巻第三 夏歌 264
詞書「崇徳院に百首歌たてまつりける時」
夕立の二首目である。雨の去った後の涼しさを、夏衣に即して詠む。詞書によれば崇徳院に詠進した百首歌の折の一首で、久安六年に成立した久安百首を指す。巻第一の第十三首、本巻の第百八十五首も同じ百首の詠である。
作者の「藤原清輔朝臣」は藤原清輔である。藤原顕輔の子で、六条藤家の歌学を受け継ぎ、『袋草紙』『奥義抄』を著した。巻第一では第三十四首に現れた。第百八十一首の作者である藤原重家は弟にあたる。
場面は夏の夕暮、場所は特定されない。
直接の契機は百首歌の詠進である。
初句「おのづから」は、自然と、ひとりでに、の意である。人が手を加えずとも涼しくなったことが示される。
二句「涼しくもあるか」の「か」は詠嘆の終助詞で、涼しくもあることだ、の意になる。
三句「夏衣」で対象が定まる。第二百六十首の良経歌に続き、涼しさを衣に即して詠む形である。
四句「ひも夕暮の」の「ひも」は「日も」であると同時に、衣の「紐」を掛ける。夏衣の縁語であり、紐を解くという涼み方が言外に示される。同音によって天と身のことが一語に収められている。
結句「雨の名残に」の「名残」は後に残る気配をいい、第二百四十七首の定家歌でも用いられた語である。夕立が去った後の涼しさが、一首の結論として置かれる。前歌が雨の前を詠んだのに対し、この歌は雨の後を詠み、二首で夕立の前後が押さえられている。
おのづから:自然と。ひとりでに
ひも:「日も」に衣の「紐」を掛ける
なごり:後に残る気配や余韻
- 作者
-
藤原清輔
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-