- 歌の意味
-
夕立の雲もとどまらない、夏の日の傾く山に、ひぐらしの声が聞こえる。
- 鑑賞
-
巻第三 夏歌 268
詞書「百首歌の中に」
夕立からひぐらしへ移る位置に置かれる。雲も日も去っていく中に、鳴き声だけが残る。詞書によれば百首歌のうちの一首である。
作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第百八十二首
第二百十五首
第二百四十首
第二百五十六首に続く五度目の登場となる。
場面は夏の日暮れ、場所は山である。
直接の契機は百首歌の詠進である。
ひぐらしは夏の終わりから秋にかけて、朝夕に鳴く蝉である。
初句
二句「夕立の雲もとまらぬ」は、夕立の雲もとどまらない、の意である。「も」は、雲までも、の含みで、下の日にも同じことが及ぶ。第二百六十五首の公経歌が「一群過ぎぬ」と雲の通過を詠んだのを受ける形になっている。
三句「夏の日の」は夏の日輪をいう。雲と日が並べられ、いずれも去っていくものとして示される。
四句「傾く山に」は、日が沈もうとする山、の意である。
結句「ひぐらしの声」は体言止めである。雲は過ぎ、日は傾き、残るのは声だけである。本巻の時鳥の一連が声だけを手がかりとしてきたのと同じ形が、ここでは蝉に移されている。夏の終わりが近いことが、この鳴き声によって示され、次の歌へ受け渡される。
かたぶく:傾く。日が沈もうとする
ひぐらし:夏の終わりから秋にかけて、朝夕に鳴く蝉
- 作者
-
式子内親王
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-