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いづちとか夜は蛍の上るらん
行く方知らぬ草の枕に

歌の意味
どこへ行こうというので、夜は蛍が上っていくのだろう。自分の行く先も知らない、草の枕のもとで。
鑑賞
巻第三 夏歌 272

詞書「蛍の飛び上るを見てよみ侍りける」
 ここから蛍を詠む歌が続く。第二百五十五首でも蛍が詠まれたが、ここでは旅寝の場面に置かれる。詞書によれば蛍の飛び上がるさまを見て詠まれた歌である。
 作者の壬生忠見は壬生忠岑の子で、平安時代中期の歌人である。三十六歌仙の一人に数えられる。巻第一では第十二首
第七十八首に現れた。第二百八十三首の作者である壬生忠岑は父にあたる。
 場面は夏の夜、場所は旅先の野である。
 直接の契機は、蛍の飛び上がるのを目にしたことである。

 初句「いづちとか」の「いづち」はどこへ、の意である。「か」は疑問の係助詞で、三句の「らん」に係る。
 二句「夜は蛍の」で対象が示される。
 三句「上るらん」の「らん」は現在推量の助動詞である。蛍が高く飛ぶさまを、どこかへ向かって上っていくものと捉えている。
 四句「行く方知らぬ」は、行き先がわからない、の意である。蛍の行く先がわからないと読めると同時に、自分の行く先もわからないと読める。旅する者の身の上が、この一語で重ねられる。
 結句「草の枕に」は体言止めである。「草の枕」は旅寝をいう。地に伏す旅人と、空へ上る蛍とが対比され、上下の方向によって二つの境遇が示されている。

いづち:どこへ
ゆくかた:行き先
くさのまくら:旅寝。旅先での宿り
作者
壬生忠見
出典
新古今和歌集
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