- 歌の意味
-
蛍の飛ぶ野の沢に茂る葦の根もと、その下を夜ごとに通っていく秋風よ。
- 鑑賞
-
巻第三 夏歌 273
詞書「五十首歌たてまつりし時」
蛍の二首目である。蛍の飛ぶ夜の沢に、すでに秋風が通っているとする。詞書によれば五十首歌を詠進した折の一首である。
作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。本巻では第二百七十首に続く七度目の登場となる。
場面は夏の終わりの夜、場所は葦の茂る野の沢である。
直接の契機は五十首歌の詠進である。
初句「蛍飛ぶ」で夏の景が示される。
二句「野沢に茂る」で場所が定まる。
三句「葦の根の」は葦の根もとをいう。「ね」の音は下の「夜な夜な」へ続き、音の上でもつながる。
四句「夜な夜な下に」の「夜な夜な」は毎夜、の意である。「下」は葦の根もとの、目に見えない低いところをいう。
結句「通ふ秋風」は体言止めである。地上には夏の蛍が飛び、その足もとを秋風が通っているという構図で、夏と秋が上下に重なっている。第二百七十首
第二百七十一首が下葉と下露に秋を見たのに続き、この歌も低い位置に秋を置いており、三首が同じ方法を共有している。
のさは:野の中の沢
よなよな:毎夜
かよふ:行き来する。通ってくる
- 作者
-
藤原良経
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-