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岩井汲むあたりの小笹玉越えて
かつがつ結ぶ秋の夕露

歌の意味
岩井を汲むあたりの小笹に、玉が転がり越えて、少しずつ結んでいく秋の夕露よ。
鑑賞
巻第三 夏歌 280

詞書「文治六年女御入内屏風に」
 夏の終わりの二首目である。岩の間の泉のほとりの笹に、秋の露が結びはじめると詠む。詞書によれば文治六年の女御入内の折の屏風歌である。巻第七の第七百十九首も同じ屏風の歌である。
 作者の「入道前関白太政大臣」は藤原兼実である。摂政関白
太政大臣を務め、日記『玉葉』を残した。本巻では第二百三十一首に続く二度目の登場となる。
 場面は夏の終わりの夕方、場所は岩井のほとりである。
 直接の契機は屏風歌としての詠進である。

 初句「岩井汲む」の「岩井」は岩の間から湧く泉をいう。第二百五十八首の慈円歌の「山の井」と同じ系列の語である。
 二句「あたりの小笹」の「小笹」は小さな笹で、「小」は語調を整える接頭語である。第二百十九首の実定歌でも用いられた。
 三句「玉越えて」は、露の玉が葉から葉へ転がり越えて、の意である。露を玉と見る言い方は第二百七十五首でも用いられていた。
 四句「かつがつ結ぶ」の「かつがつ」は、少しずつ、どうにか、の意である。「結ぶ」は露が結ぶことをいうが、第二百五十八首では手で水を掬う意で用いられており、同じ語が別の働きをする。
 結句「秋の夕露」は体言止めである。まだ夏でありながら、露を「秋の」と呼ぶことで、季節が移りかけていることが示される。第二百七十三首以来の、隠れた場所に秋を認める型が、ここでは露に移されている。

いはゐ:岩の間から湧く泉
をざさ:小さな笹。「を」は語調を整える接頭語
かつがつ:少しずつ。どうにか
作者
藤原兼実
出典
新古今和歌集
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