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この寝ぬる夜の間に秋は来にけらし
朝けの風の昨日にも似ぬ

歌の意味
この寝ていた一夜のうちに秋は来たらしい。明け方の風が、昨日とは似ていない。
鑑賞
巻第四 秋歌上 287

詞書は前の歌に続き「初秋の心」
 秋風の三首目である。一夜のうちに季節が変わったことを、明け方の風によって知る。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の「藤原季通朝臣」は平安時代後期の歌人である。管絃にも通じたことで知られる。
 場面は秋の初めの明け方、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句
二句「この寝ぬる夜の間に」は、この眠っていた一夜のあいだに、の意である。眠っているあいだに季節が入れ替わったという捉え方であり、気づかぬうちの変化という点で前歌の「いつしかと」に通じる。
 三句「秋は来にけらし」の「けらし」は「けるらし」の約で、根拠に基づく推定を表す。巻第三の巻頭第百七十五首、第百九十六首、第二百六十六首でも用いられた型である。その根拠は下の句に置かれる。
 四句「朝けの風の」の「朝け」は夜明け方をいう。
 結句「昨日にも似ぬ」は、昨日とは似ていない、の意である。今日の風を昨日の風と比べるという、記憶に頼った判断であり、目に見える徴ではない。前の二首が葉の状態を徴としたのに対し、この歌は肌に触れる風そのものの違いを徴としている。

けらし:「けるらし」の約。根拠に基づく推定を表す
あさけ:夜明け方
作者
藤原季通
出典
新古今和歌集
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