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おしなべて物を思はぬ人にさへ
心をつくる秋の初風

歌の意味
総じて物思いをしない人にさえも、心を生じさせる秋の初風よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 299

詞書「題しらず」
 秋風が誰の心にも物思いを起こさせると詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
 作者の西行法師は俗名を佐藤義清といい、鳥羽院の北面の武士であったが二十三歳で出家した。巻第一では第七首ほか、巻第二では第百二十六首、巻第三では第二百十七首ほかに現れた。
 場面は秋の初め、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 この歌は西行の代表作の一つとして広く知られる。

 初句「おしなべて」は、総じて、一様に、の意である。巻第一の第三十五首の実定歌でも用いられた語で、例外なく全体に及ぶことを示す。
 二句「物を思はぬ」は、物思いをしない、の意である。感じやすくない者、と言い換えてもよい。
 三句「人にさへ」の「さへ」は添加を表し、そういう人にまでも、の意になる。物を思う者は言うまでもない、という含みが生じる。
 四句「心をつくる」の「つくる」は、生じさせる、作り出す意である。心そのものを作り出すという言い方で、感じる能力のない者にまで感情を与えるという強い主張になる。
 結句「秋の初風」は体言止めで、第二百九十二首
第二百九十五首
第二百九十六首と同じ結句である。本巻でこの結句は四度目となる。景物を一切描かず、風の働きだけを述べる作りであり、秋風が人の心に及ぼす力を主題としている。

おしなべて:総じて。一様に
ものをおもふ:思い悩む。物思いにふける
つくる:生じさせる。作り出す
作者
西行法師
出典
新古今和歌集
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