夕されば荻の葉むけを吹く風に
ことぞともなく涙落ちけり
- 歌の意味
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夕方になると、荻の葉の向きを吹く風に、何ということもなく涙が落ちるのだった。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 304
詞書は前の歌に続き「題しらず」
荻を吹く風の二首目である。前歌が夜の寝覚めを予想したのに対し、この歌は夕暮のうちにすでに涙が落ちる。原文では詞書が改めて記されていない。
作者の「後徳大寺左大臣」は藤原実定である。本巻では第二百八十八首に続く二度目の登場となる。
場面は秋の初めの夕方、場所は特定されない。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
なお本文の初句は「夕されば」とあり、読み仮名の行の「ゆふくれは」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「夕されば」の「さる」は時が移り来る意で、夕方になると、の意になる。巻第一の第八首の注に触れた「春さる」と同じ語法である。
二句「荻の葉むけを」の「葉むけ」は葉の向きをいい、第二百八十六首の崇徳院歌にも用いられた語である。二首が同じ語を共有している。
三句「吹く風に」の「に」は原因を表す。
四句「ことぞともなく」は、これという理由もなく、の意である。涙の原因が特定できないことが示される。第二百九十九首の西行歌が、物思いをしない者にまで心を作ると詠んだのと同じ観念であり、そちらが一般論として述べたものを、この歌は自らの身に起こったこととして述べている。
結句「涙落ちけり」の「けり」は詠嘆で、気づいた時には落ちていたという調子を出す。
ゆふさる:夕方になる。「さる」は時が移り来る意
はむけ:葉の向き
ことぞともなく:これという理由もなく
- 作者
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藤原実定
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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