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秋来ぬと松吹く風も知らせけり
かならず荻の上葉ならねど

歌の意味
秋が来たと、松を吹く風も知らせたのだった。必ずしも荻の上葉でなくとも。
鑑賞
巻第四 秋歌上 306

詞書「題しらず」
 荻を吹く風の四首目である。秋を知らせるのは荻に限らないと述べ、前の三首を受けて視野を広げる。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
 作者の七条院権大夫は、後鳥羽院の母である七条院殖子に仕えた人物である。伝は詳らかでない。
 場面は秋の初め、場所は松のあるあたりである。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「秋来ぬと」は、秋が来たと、の意である。巻頭以来の「秋は来にけり」を、引用の形に変えて用いている。
 二句「松吹く風も」で対象が示される。「も」は、松の風までも、の含みである。松は常緑で色を変えないため、第二百九十首でも秋を知らせにくい木として詠まれていた。その松の風が秋を知らせることになる。
 三句「知らせけり」の「けり」は詠嘆である。
 四句
五句「かならず荻の上葉ならねど」は、必ずしも荻の上葉でなくとも、の意である。荻こそが秋風の草だという通念を、ここで相対化している。第三百五首の俊成歌が荻と風の縁を問うたのに続き、この歌はその縁を必然ではないと言う。二首が対をなす。
 「上葉」は上のほうの葉で、第二百九十八首の「末葉」と同じ位置を指す語である。

うはば:上のほうの葉
かならず:必ずしも。下に打消を伴う
作者
七条院権大夫
出典
新古今和歌集
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