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うたた寝の朝けの袖にかはるなり
ならす扇の秋の初風

歌の意味
うたた寝をした明け方の袖に、入れ替わったようだ。使い慣らした扇の風が、秋の初風に。
鑑賞
巻第四 秋歌上 308

詞書「百首歌に」
 ここから扇を詠む歌が二首続く。夏に用いた扇の風が、秋の初風に入れ替わるという趣向である。詞書によれば百首歌のうちの一首である。
 作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。巻第一では第三首ほか、巻第二では第百一首ほか、巻第三では第百八十二首ほかに現れた。
 場面は秋の初めの明け方、場所は寝所である。
 直接の契機は百首歌の詠進である。
 巻第三の第二百八十三首の忠岑歌でも、夏の果てる扇と秋の白露とが並べられていた。扇は夏の道具として、秋の初めに置かれるものである。

 初句「うたた寝の」の「うたた寝」は本格的に床に入らずに眠ることで、巻第三の第百九十七首
第二百四十二首ほかでくり返し用いられた語である。
 二句「朝けの袖に」の「朝け」は明け方をいい、第二百八十七首の季通歌にも用いられた語である。「袖に」は、袖のあたりで、の意である。
 三句「かはるなり」の「なり」は伝聞推定の助動詞で、そうらしいと判断する形である。何が何に替わったのかは、下の句で明かされる。
 四句「ならす扇の」の「ならす」は使い慣らす意である。夏のあいだ手にしていた扇が示される。
 結句「秋の初風」は体言止めで、本巻では第二百九十二首
第二百九十五首
第二百九十六首
第二百九十九首に続いて五度目である。扇の起こす人工の風から、自然の秋風へと入れ替わるという構成で、夏と秋の交替が身近な道具に即して示されている。

うたたね:本格的に床に入らずに眠ること
あさけ:明け方
ならす:使い慣らす
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
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