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手もたゆくならす扇の置き所
忘るばかりに秋風ぞ吹く

歌の意味
手も疲れるほど使い慣らした扇の、その置き場所を忘れてしまうほどに、秋風が吹いている。
鑑賞
巻第四 秋歌上 309

詞書「題しらず」
 扇の二首目である。前歌が扇の風から秋風への交替を詠んだのに対し、この歌は扇そのものを忘れるほどだと詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
 作者の相模は平安時代中期の女房歌人である。生没年は伝わらない。相模守大江公資の妻であったことからこの呼び名がある。巻第三では第二百三首に現れた。
 場面は秋の初め、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「手もたゆく」の「たゆし」はだるい、疲れているの意である。夏のあいだ扇を使い続けた疲れが示される。
 二句「ならす扇の」は前歌と同じ語である。二首が同じ語を共有し、並べて置かれている。
 三句「置き所」は置いた場所をいう。
 四句「忘るばかりに」の「ばかり」は程度を表す。どこに置いたか忘れるほど、の意になる。扇を使わなくなって日が経ったことが、置き場所を忘れたという形で示される。
 結句「秋風ぞ吹く」は「ぞ」の係り結びで、第二百九十八首と同じ結句である。前歌が入れ替わりの瞬間を捉えたのに対し、この歌は入れ替わってからしばらく経った状態を詠んでおり、二首で時間の進行が示されている。

たゆし:だるい。疲れている
ならす:使い慣らす
おきどころ:置いた場所
作者
相模
出典
新古今和歌集
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