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眺むれば衣手涼しひさかたの
天の河原の秋の夕暮

歌の意味
眺めていると袖が涼しい。天の河原の、秋の夕暮よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 321

詞書「百首歌のなかに」
 七夕の九首目である。天の川を眺めるうちに袖が涼しくなると詠み、地上の身体と天上の景を結ぶ。詞書によれば百首歌のうちの一首である。
 作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第三百八首に続く二度目の登場となる。
 場面は七月七日の夕暮、場所は特定されない。
 直接の契機は百首歌の詠進である。

 初句「眺むれば」の「眺む」は物思いにふけって見ることで、「長雨」と同音でもあるが、ここでは秋の歌であるからその意は働かない。第二百九十七首
第三百十二首でも物思いの語が用いられており、この巻では見ることと思うことが重ねられる。
 二句「衣手涼し」の「衣手」は袖をいう。第二百九十二首の家隆歌の「衣手寒し」と同じ形であり、そちらが寒さ、こちらが涼しさである。見ることによって身体が冷えるという捉え方であり、巻第三の第二百四十二首
第二百六十首で香や光を涼しさとして受け取ったのと同じ、感覚の置き換えである。
 三句「ひさかたの」は「天」に掛かる枕詞である。巻第三の第二百五十四首
第二百六十六首でも用いられた。
 四句「天の河原の」は天の川の河原をいう。川であるから河原があるという理屈で、天上の景に地上の地形が与えられている。第三百十七首が天の川に波を認めたのと同じ発想である。
 結句「秋の夕暮」は体言止めである。七夕は夜の行事であるが、この歌はその前の夕暮を詠んでおり、逢瀬そのものではなく、それを待つ時間が主題となっている。

ころもで:袖
ひさかたの:「天」に掛かる枕詞
かはら:川の岸辺の石の多いところ
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
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