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いとどしく思ひ消ぬべし七夕の
別れの袖に置ける白露

歌の意味
いっそう思いに消え入ってしまいそうだ。七夕の別れの袖に置いている白露よ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 326

詞書は前の歌に続き「七夕の心を」
 七夕の十四首目である。逢瀬の後の別れを詠み、袖の露を涙とする。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の「大中臣能宣朝臣」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務め、三十六歌仙の一人に数えられる。巻第三では第百九十六首に現れた。第三百十七首の作者である輔親は子にあたる。
 場面は七月八日の明け方、場所は天上である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「いとどしく」は、いっそう、ますますの意である。巻第三の第二百二十八首
第二百五十六首でも同じ語が用いられていた。
 二句「思ひ消ぬべし」の「消ぬ」は消える意で、露の縁語である。「思ひ消ぬ」は物思いのあまり消え入る、の意になり、人が露のように消えるという言い方である。「べし」は推量を表す。
 三句「七夕の」で織女が示される。
 四句「別れの袖に」で、逢瀬の後の別れが示される。前歌が夜明けを惜しんだのに続き、この歌はその後を詠む。二首が時間の順に並べられている。
 結句「置ける白露」は体言止めである。袖に置く露は涙であり、第二百九十四首
第三百十二首でも同じ見立てが用いられていた。露と、露のように消える身とが同じ一首の中に置かれ、涙と命が重ねられている。

いとどしく:いっそう。ますます
けぬ:消える。露の縁語
しらつゆ:白く光る露。ここでは涙
作者
大中臣能宣
出典
新古今和歌集
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