- 歌の意味
-
狩衣は自分では摺り染めまい。露の深い野原の萩の花に任せて。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 329
詞書「題しらず」
萩の二首目である。萩の花に触れて自然に染まる衣を詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
作者の「従三位頼政」は源頼政である。武人として仕えながら和歌に長じ、従三位に叙された。巻第三では第二百六十七首に現れた。巻第二の第百三十首
巻第三の第二百三十七首の作者である二条院讃岐は娘にあたる。
場面は秋、場所は萩の生える野原である。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
なお本文の三句は「露深き」とあり、読み仮名の行の「つゆしけき」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「かり衣」は狩に用いる衣で、外出着として詠まれる。
二句「我とはすらじ」の「摺る」は草花を布に擦りつけて染めることをいう。「じ」は打消意志の助動詞で、自分では染めまい、の意になる。
三句「露深き」は露の多いさまをいう。露に濡れれば花の色は移りやすい。
四句「野原の萩の」で染める相手が示される。
結句「花に任せて」は、花のするままに任せて、の意である。人が手を加えるのではなく、野を歩くうちに自然と染まるのに任せるという構えであり、巻第三の第百十一首の貫之歌が「風のまにまに」と香の移るのに任せたのと同じ姿勢である。次の第三百三十首も摺り染めの衣を詠み、二首が並ぶ。
かりごろも:狩に用いる衣。外出着
する:草花を布に擦りつけて染める
じ:打消意志の助動詞。〜まい
- 作者
-
源頼政
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-