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秋の野を分けゆく露に移りつつ
わが衣手は花の香ぞする

歌の意味
秋の野を分け入っていく露に、次々と移りながら、私の袖は花の香がするのだった。
鑑賞
巻第四 秋歌上 335

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 萩の一連の締めくくりに置かれる。露を介して花の香が衣に移ると詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の凡河内躬恒は平安時代前期の歌人で、『古今和歌集』の撰者の一人である。巻第一では第二十二首
第六十八首、巻第二では第百六首に現れた。
 場面は秋、場所は秋の野である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句
二句「秋の野を分けゆく」は、草を分けて進む、の意である。巻第二の第九十七首の季能歌の「踏み分けて」と同じく、進むための労が示される。
 三句「露に移りつつ」の「移る」は色や香が他へ移る意である。「つつ」は継続を表し、歩くにつれて次々に移ることになる。第三百二十九首が花の色が移るのに任せると詠んだのに対し、この歌は香が移る。二首が「移る」を軸に呼応している。
 四句「わが衣手は」の「衣手」は袖をいう。
 結句「花の香ぞする」は「ぞ」の係り結びである。巻第二の第百十一首の貫之歌が「花の香に衣は深くなりにけり」と詠んだのと同じ趣向であり、そちらは春の花、こちらは秋の花である。露が香を運ぶ媒介となっている点が、この歌の加えた工夫である。

わけゆく:草を分けて進む
うつる:色や香が他へ移る
ころもで:袖
作者
凡河内躬恒
出典
新古今和歌集
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