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夕されば玉散る野辺の女郎花
枕定めぬ秋風ぞ吹く

歌の意味
夕方になると玉のような露が散る野辺の女郎花に、枕を定めさせない秋風が吹いている。
鑑賞
巻第四 秋歌上 338

詞書「千五百番歌合に」
 女郎花の三首目である。風に揺れて定まらない花を、寝る場所を決められない女に見立てる。詞書によれば千五百番歌合に出された歌である。
 作者の「左近中将良平」は藤原良平(一一八四〜一二四〇)である。関白藤原兼実の子で、第二百九十三首ほかの作者である良経の弟にあたる。巻第二では第百四十四首に現れた。
 場面は秋の夕方、場所は女郎花の咲く野辺である。
 直接の契機は歌合への出詠である。

 初句「夕されば」の「さる」は移り来る意で、夕方になると、の意になる。第三百四首の実定歌と同じ句である。
 二句「玉散る野辺の」は、玉のような露が散る野辺、の意である。露を玉と見る言い方は第三百三十四首でも用いられていた。
 三句「女郎花」で対象が定まる。
 四句「枕定めぬ」は、枕を定めない、すなわち寝る場所が決まらない、の意である。風に吹かれて花が定まらないさまを、独り寝の落ち着かなさとして述べている。花を女に見立てる前提の上に立つ表現である。
 結句「秋風ぞ吹く」は「ぞ」の係り結びである。第三百三十二首が萩について落ち着かなさを詠んだのと同じ主題が、ここでは女郎花に移されている。

ゆふさる:夕方になる。「さる」は移り来る意
たま:玉。露を見立てていう
まくらさだむ:寝る場所を決める
作者
藤原良平
出典
新古今和歌集
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