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花薄またつゆ深しほに出でて
眺めじと思ふ秋の盛りを

歌の意味
花薄には、今もまた露が深い。穂に出て、いや表に現れて眺めまいと思う、秋の盛りであるのに。
鑑賞
巻第四 秋歌上 349

詞書「百首歌に」
 薄の四首目である。穂に出るという語を、薄の生態と自らの心の現れとの両方に働かせる。詞書によれば百首歌のうちの一首である。
 作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第三百八首
第三百二十一首に続く三度目の登場となる。
 場面は秋、場所は薄の生えるあたりである。
 直接の契機は百首歌の詠進である。

 初句「花薄」で対象を掲げる。
 二句「またつゆ深し」は、今もまた露が深い、の意である。第三百二十九首の頼政歌でも「露深き」の語が用いられていた。
 三句「ほに出でて」の「ほに出づ」は、穂が出る意と、表に現れる意との掛詞である。巻第三の第二百七十七首
第二百七十八首でも用いられた語で、そちらは荻について、こちらは薄について用いられている。
 四句「眺めじと思ふ」の「じ」は打消意志の助動詞である。「眺む」は物思いにふけって見る意で、この巻では第三百二十一首でも用いられた。心を表に出して眺めるまいという抑制が示される。
 結句「秋の盛りを」は体言止めで、「を」は逆接に近い働きをする。秋の最も盛んな時であるのに、それを眺めまいとする。薄が穂を出すのと、心が表に出るのとを一語で結び、見ないでいようとする意志が述べられており、なお本文の三句は「ほに出でて」とあり、読み仮名の行の「ほにいてては」と一致しないが、ここでは本文の表記に従う。

ほにいづ:穂が出る意と、表に現れる意を掛ける
ながむ:物思いにふけって見る
じ:打消意志の助動詞。〜まい
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
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