荻の葉に吹けば嵐の秋なるを
待ちける夜半のさを鹿の声
- 歌の意味
-
荻の葉に吹けば嵐となる秋であるのに、それを待っていた夜半の牡鹿の声よ。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 356
詞書「百首歌たてまつりし時」
荻の一連から鹿へ移る位置に置かれる。荻を鳴らす風の季節に、鹿がその時を待っていたかのように鳴くと詠む。詞書によれば百首歌を詠進した折の一首である。
作者の「摂政太政大臣」は藤原良経である。関白藤原兼実の子で、『新古今和歌集』の仮名序を執筆した。本巻では第二百九十三首に続く二度目の登場となる。
場面は秋の夜半、場所は荻の生えるあたりである。
直接の契機は百首歌の詠進である。
初句
二句「荻の葉に吹けば嵐の」は、荻の葉に吹くと嵐となる、の意である。「嵐」は激しい風をいい、荻の葉が鳴る音の大きさから、風がそう感じられることになる。
三句「秋なるを」の「を」は逆接に近い働きをする。そういう荒れた季節であるのに、と下に続く。
四句「待ちける夜半の」の「けり」は詠嘆で、待っていたのだなという気づきを表す。鹿がこの季節を待っていたことになる。
結句「さを鹿の声」は体言止めである。「さ」は接頭語、「を鹿」は牡鹿をいう。鹿は秋に妻を求めて鳴くとされ、以下この巻では鹿の声を詠む歌が続く。人が悲しむ季節を、鹿は待っていたという対比が生じており、第三百五十五首までの荻の一連が悲しみを述べてきたのに対し、この歌は待たれるものとして秋を捉え直している。
あらし:激しい風
よは:夜半。夜中
さをしか:牡鹿。秋に妻を求めて鳴くとされた
- 作者
-
藤原良経
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-