古典和歌stream

それながら昔にもあらぬ秋風に
いとど眺めをしづのをだまき

歌の意味
同じ秋風でありながら昔のままではない、その風に、いっそう眺めをくり返すことだ。倭文の苧環のように。
鑑賞
巻第四 秋歌上 368

詞書は前の歌に続き「秋のうた」
 秋の夕暮の一連を受け、同じ風でありながら昔とは違うと詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の式子内親王は後白河天皇の皇女で、賀茂斎院を務めた。本巻では第三百八首
第三百二十一首
第三百四十九首に続く四度目の登場となる。
 場面は秋、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 倭文の苧環は、麻や苧の糸を巻いた輪で、糸を繰り出すことから「繰り返す」の意を導く語として用いられた。

 初句「それながら」は、それでありながら、の意である。同じ秋風であることが認められる。
 二句「昔にもあらぬ」は、昔のままでもない、の意である。第三百十二首の小町歌が「ありしにも似ぬ袖の露」と詠んだのと同じ構図であり、そちらは風が同じで涙が違うとしたのに対し、この歌は風そのものが違うとする。
 三句「秋風に」で対象が定まる。
 四句「いとど眺めを」の「いとど」はいっそう、ますますの意で、その音に「糸」が響き、下の苧環を導く。「眺む」は物思いにふけって見る意である。
 結句「しづのをだまき」は体言止めである。苧環は糸を巻いた輪で、繰り出しては巻き取ることから、同じことを繰り返す意を表す。眺めることが際限なく繰り返されるという意が、この一語に託されている。

いとど:いっそう。ますます。「糸」の音を響かせる
しづのをだまき:倭文の糸を巻いた輪。繰り返しの意を導く
作者
式子内親王
出典
新古今和歌集
その他の歌