古典和歌stream

暁の露は涙もとどまらで
恨むる風の声ぞ残れる

歌の意味
暁の露も涙もとどまらずに消えて、恨む風の声だけが残っているのだった。
鑑賞
巻第四 秋歌上 372

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 暁に消える露と涙に対し、風の声だけが残ると詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の相模は平安時代中期の女房歌人である。相模守大江公資の妻であったことからこの呼び名がある。巻第三では第二百三首、本巻では第三百九首に現れた。
 場面は秋の暁、場所は特定されない。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「暁の」で時刻が示される。夜が明けようとするころである。
 二句「露は涙も」は、露も涙も、の意である。露と涙を並べることは、この巻で第二百九十四首以来くり返されてきた。
 三句「とどまらで」の「で」は打消の接続助詞で、とどまらずに、の意になる。露も涙も消えてしまうことが示される。
 四句「恨むる風の」は、恨みごとを言う風、の意である。風の音を恨み言として聞き取る擬人化である。
 結句「声ぞ残れる」は「ぞ」の係り結びである。形あるものは消え、音だけが残るという構成であり、巻第三の第二百十三首の保季歌が去った鳥の後に雫だけが残ると詠んだのと同じ、残るものによって失われたものを示す型である。

あかつき:夜が明けようとするころ
とどまる:とどまる。そのまま残る
うらむ:恨みごとを言う
作者
相模
出典
新古今和歌集
その他の歌