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風吹けば玉散る萩の下露に
はかなく宿る野辺の月かな

歌の意味
風が吹けば玉のような露が散る、その萩の下露に、はかなく宿っている野辺の月であることだ。
鑑賞
巻第四 秋歌上 386

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月の十一首目である。萩の下露に宿る月を詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の「法性寺入道前関白太政大臣」は藤原忠通である。摂政関白
太政大臣を務め、法性寺に隠棲した。本巻では第三百二首に続く二度目の登場となる。第三百七十三首の詞書に見える歌合はこの人物の家で催されたものである。
 場面は秋の夜、場所は萩の生える野辺である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「風吹けば」は確定条件である。
 二句「玉散る萩の」は、玉のような露が散る萩、の意である。露を玉と見る言い方は第三百三十四首
第三百三十八首でも用いられていた。
 三句「下露に」の「下露」は草木の下に置く露をいう。巻第三の第二百七十一首
第二百七十九首でも用いられた語である。
 四句「はかなく宿る」の「はかなし」は頼りない、あっけないの意である。「宿る」は光が映ることをいう。露は風が吹けば散るのだから、そこに映る月も一瞬しか保たれない。
 結句「野辺の月かな」は体言止めである。第三百七十七首の有家歌が稲妻は露にすら宿りきらないと詠んだのに対し、この歌は月が露に宿ると詠む。同じ露という小さな面を、光の側から二通りに扱っている。

したつゆ:草木の下に置く露
はかなし:頼りない。あっけない
やどる:光が映る
作者
藤原忠通
出典
新古今和歌集
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