眺むれば千々に物思ふ月に又
わが身ひとつの峰の松風
- 歌の意味
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眺めていると千々に物思いをさせる月に、さらに加えて、我が身ひとつのものである峰の松風よ。
- 鑑賞
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巻第四 秋歌上 397
詞書は前の歌に続き「月前風」
月の二十二首目である。前歌に続いて月と松風を取り合わせる。原文では詞書が改めて記されていない。
作者の鴨長明は下鴨社の神職の家に生まれ、のちに出家して『方丈記』を著した。本巻では第三百六十六首に続く二度目の登場となる。
場面は秋の夜、場所は峰である。
直接の契機は「月前風」の題による詠である。
本歌は大江千里の「月見れば千々に物こそ悲しけれわが身ひとつの秋にはあらねど」(『古今和歌集』秋上)である。第四百五首の作者はその千里である。
初句「眺むれば」は本歌の「月見れば」に対応する位置にある。
二句「千々に物思ふ」は本歌の「千々に物こそ悲しけれ」を受ける。「千々」は数多く、さまざまに、の意である。
三句「月に又」の「又」は、それに加えて、の意である。ここから本歌にない要素が加えられる。
四句「わが身ひとつの」も本歌の語であるが、本歌では「秋は我ひとりのものではない」と否定されていたのに対し、この歌では「峰の松風」を修飾して肯定される。秋は万人のものでも、この松風は自分ひとりのものだ、という言い方になる。
結句「峰の松風」は体言止めである。本歌の語を二つ用いながら、否定を肯定に転じることで別の歌に仕立てており、本歌取りの手際がよく表れている。
ちぢに:数多く。さまざまに
わがみひとつ:自分ひとりのもの
まつかぜ:松を吹く風
- 作者
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鴨長明
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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