古典和歌stream

忘れじな難波の秋の夜半の空
こと浦にすむ月は見るとも

歌の意味
忘れまい、難波の秋の夜半の空を。たとえ別の浦に澄む月を見ることがあろうとも。
鑑賞
巻第四 秋歌上 400

詞書は前の歌に続き「海辺秋月」
 海辺の月の二首目である。難波の空を忘れまいと誓う。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の宜秋門院丹後は、後鳥羽院の中宮である宜秋門院任子に仕えた女房歌人である。生没年は伝わらない。
 場面は秋の夜半、場所は摂津国の難波である。巻第一の第二十六首
第三十六首でも詠まれた地である。
 直接の契機は歌合への出詠である。

 初句「忘れじな」の「じ」は打消意志の助動詞、「な」は詠嘆の終助詞である。忘れまい、という誓いの形で歌が始まる。巻第一の第五十二首の式子内親王歌が「我を忘るな」と呼びかけたのと同じ語であるが、そちらは相手に求め、こちらは自らに課している。
 二句
三句「難波の秋の夜半の空」で、忘れまいとする対象が示される。
 四句「こと浦にすむ」の「こと浦」は別の浦をいう。「すむ」は月が澄む意と、そこに住む意との掛詞である。本巻の第三百七十四首
第三百八十首でも用いられた掛詞である。
 結句「月は見るとも」の「とも」は逆接の仮定条件である。将来ほかの土地で月を見ることがあっても、という譲歩であり、今この場所の月を特別なものとする言い方になる。巻第二の第百五首の業平歌が「今日の今宵に似る時はなし」と一夜を特別視したのと同じ構えである。

じ:打消意志の助動詞。〜まい
ことうら:別の浦
すむ:月が澄む意と、そこに住む意を掛ける
作者
宜秋門院丹後
出典
新古今和歌集
その他の歌