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秋の夜の月やをしまのあまのはら
明け方近き沖の釣舟

歌の意味
秋の夜の月を惜しもうか、その雄島の海人の原よ。明け方の近い沖の釣舟が見える。
鑑賞
巻第四 秋歌上 403

詞書「和歌所の歌合に海辺月を」
 海辺の月の五首目である。明け方近い沖の釣舟を詠み、月を惜しむ心を重ねる。詞書によれば和歌所の歌合に「海辺月」の題で出された歌である。
 作者の藤原家隆は『新古今和歌集』の撰者の一人である。本巻では第三百八十九首
第三百九十二首に続く六度目の登場となる。
 場面は秋の明け方近く、場所は陸奥国の雄島である。第三百九十九首と同じ地である。
 直接の契機は和歌所の歌合への出詠である。

 初句
二句「秋の夜の月やをしまの」の「をしま」は地名であるが、その音に「惜しま」すなわち惜しもう、の意が響く。「や」は間投助詞であるとともに、惜しもうかという問いの調子を添える。地名の中に感情の語が折り込まれている。
 三句「あまのはら」は「海人の原」であると同時に「天の原」の音を含み、海と空の両方に働く。二つの掛詞が続けて置かれている。
 四句「明け方近き」で時刻が示される。月の消える時刻であり、惜しむ理由がここで明かされる。
 結句「沖の釣舟」は体言止めである。惜しむ心を述べたうえで、最後に置かれるのは働く者の舟である。第四百一首の長明歌が労働する海人を詠んだのに続き、この歌も海で働く者の姿を置いており、月を惜しむ者と働く者とが同じ景の中にある。

をしま:陸奥国の歌枕。「惜しま」の音を響かせる
あまのはら:海人の原。「天の原」の音を含む
つりぶね:漁のための舟
作者
藤原家隆
出典
新古今和歌集
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