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いづくにか今宵の月の曇るべき
をぐらの山もなほやかふらん

歌の意味
どこで今宵の月が曇ることがあろうか。小倉の山さえも、なお名を変えるのではないか。
鑑賞
巻第四 秋歌上 405

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 月と心の曇りの二首目である。前歌が心の曇りを詠んだのに対し、この歌はどこにも曇りようがないと述べる。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の大江千里は平安時代前期の歌人である。漢詩の句を題として和歌を詠む句題和歌を多く残した。巻第一では第五十五首に現れた。第三百九十七首の長明歌はこの千里の歌を本歌としている。
 場面は秋の夜、場所は山城国の小倉山である。第三百四十七首でも詠まれた地である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「いづくにか」の「か」は疑問の係助詞で、三句の「べき」の連体形に係る。どこで、と問う形である。
 二句
三句「今宵の月の曇るべき」は、今宵の月が曇ることがあろうか、の意である。反語となり、どこにも曇りようがない、という意になる。
 四句「をぐらの山も」の「をぐら」は地名であるが、その音に「小暗し」すなわち薄暗い意が響く。「も」は、その小倉山までも、の含みである。
 結句「なほやかふらん」の「かふ」は変える意、「や」は疑問の係助詞、「らん」は現在推量である。今宵の月が明るいので、暗いことを名にもつ山さえ名を変えるのではないか、という言い方になる。地名の字義に理屈を差し向ける構成であり、前歌が心の曇りを詠んだのに対し、こちらは曇りの一切ないことを述べており、二首が対をなす。

いづく:どこ
をぐら:山城国の山。「小暗し」の音を響かせる
かふ:変える
作者
大江千里
出典
新古今和歌集
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