山の端に雲の横切る宵の間は
出でても月ぞなほ待たれける
- 歌の意味
-
山の端に雲が横切る宵のあいだは、月が出てもなお待たれるのだった。
- 鑑賞
-
巻第四 秋歌上 414
詞書「題しらず」
雲と月の四首目である。月が出てもなお待つ心が残ると詠む。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
作者の道因法師は平安時代後期の歌人である。俗名を藤原敦頼といい、老年に至るまで和歌に執心したことが伝えられる。巻第九の第八百八十八首にも歌が採られている。
場面は秋の宵、場所は特定されない。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
初句「山の端に」の「山の端」は山の稜線をいう。月の出る場所である。
二句「雲の横切る」は、雲が横切る、の意である。前歌が雲の切れ間から月を得たのに対し、この歌では雲が月を隠す。
三句「宵の間は」で時刻が示される。
四句「出でても月ぞ」の「ても」は逆接である。月は出たのに、という含みになる。
結句「なほ待たれける」の「れ」は自発の助動詞で、自然と待たれる、の意である。出たのになお待つというのは、雲に隠されて見えないからであり、待つ状態が終わらないことになる。巻第三の第百九十九首の有仁歌が、時鳥の声を聞いた後もなお眠れないと詠んだのと同じ、目的が果たされても状態が続く型である。
やまのは:山の稜線。山と空との境
よこぎる:横切る
る:自発を表す助動詞
- 作者
-
道因法師
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-